幕張メッセで2024年6月12~14日に開催されたインターネットテクノロジーのイベント「Interop Tokyo」。同イベントの「ShowNet」の特別企画として「Media over IP 分科会」が、幕張メッセの会場内から放送局に映像を送り、それを編集した映像をInterop会場に送るといった相互接続の実証を行いました。
Interop Tokyoでは、毎年会場内にネットワークを構築する「Show Net」というプロジェクトを実施しています。その一環として、同分科会はATENジャパンのIP-KVMエクステンダー「KX9970T/R」(Tはトランスミッター、Rはレシーバーの意)を使ったデモンストレーションを実施。
「Media over IP 分科会」を担当するNOCメンバーの中村開氏とATENジャパンの技術戦略部 営業技術課の石黒悠貴に、デモンストレーションの狙いや今後の見通しなどをお聞きしました。
― 今回の「ShowNet2024」での「Media over IP 分科会」のテーマやコンセプトについて教えてください。
そこで、今年一番力を入れている部分が、特別企画の取り組みとなっています。今までは幕張メッセの中といったように、ある程度限定されたネットワークの中だけで映像伝送を行なっていました。今回は、放送局の皆さんにご協力いただいて、実際に放送局の中にある機材と接続し、インターネット越しの映像伝送や音声のやり取りを実施しています。
従いまして、Show Net自体が一つのサービスプロバイダーのような形になっていまして、インターネットへの接続も、もちろん提供しますし、放送局間の接続で必要になるネットワークも一緒に提供していくというのがコンセプトになっています。
【ShowNet NOC チームメンバー 中村 開氏】
― ATENの IP KVMエクステンダー「KX9970T/R」を利用し、放送局のMulti Viewerなどをメディアオペレーションセンター(MOC)で受信するというのは、具体的にどういうことでしょうか。
そこで、KVMを使った映像伝送と、機材のリモートコントロールが必要になることから、IP KVMエクステンダー「KX9970T/R」を使っています。ネットワークのスペシャリストやコントリビュータが集まり、最新の技術を使ってネットワークインフラを作っていくというのが、今回の取り組みです。
最新の技術・ソリューションによって構築されるShowNetを放送局の皆さまに 放送のIP化に向けたチャレンジを実施いただく場として活用いただいております。
マルチビューワーについては先ほど、インターネット越しに放送局さん側と機材を繋いでいきますという話がありました。放送局側さんがお持ちのスイッチャーやマルチビューワーの画面に関しては、あるTV局さんに送信機を置いてもらい、映像の出し入れをしている機材と接続。そのコントローラの画面やマルチビューワーの画面を幕張メッセのMOCのエリアまで運んでもらいました。
【幕張メッセに設営されたメディアオペレーションセンター】
― ShowNet開催期間中のデモンストレーションでは、どのような内容が展示されたのでしょうか。
MOCの中で映像の切り替えなどを行いますが、現地で参加される放送局さんもいらっしゃれば、リモートで実施される放送局さん、さらにはリモート機材を使いつつ会場から遠隔地の機材と映像をコントロールする放送局さんもいらっしゃいました。
今回参加されたキー局や地方局さんは、幕張メッセとはかなり地理的にも離れている場所とネットワークを繋ぎ、実際に伝送ができるのかを検証したいとのことでした。各局さんとしてもIP化の取り組みをいろいろされている中で、インターネット回線を介した相互接続を試したいという意向があったようです。
― 今回利用されている製品「KX9970T/R」の主な機能と特徴について教えてください。
放送局様に導入いいただく場合に関しては、マスターの編集室をリモート化する利用が多くなっています。実際の使い方では何十対何十、つまりN対Nといった環境で、自席から好きな編集ルームにアクセスできることから、お引き合いをいただいているというケースもあります。
高画質・低遅延の両立とともに、抜群の操作性を実現することから、放送などで使用する機材をより環境の良い場所に集約。省スペース化が図れ、場所に縛られずに共有利用が可能になります。
【モニターとKX9970R(右下)】
【KX9970R】
― 幕張メッセのShowNet会場のMOCでのKX9970Rと放送局におけるのKX9970Tの構築について、苦労された点やスムーズにいった点を教えてください。
今回ですと、非圧縮の映像伝送をする信号もあれば、それらを操作する管理画面用のマネージメント用のネットワークもあるという点で、様々な制約がある中で、管理面のネットワークだけで接続するということが難しかった状況でした。その管理面というのも放送局さんは皆さん異なるネットワークをお持ちだったため、そことどのように相互接続をしていくのかという点で、チャレンジングな取り組みでもありました。
当初の接続がうまくいかないところもありましたが、放送局さんなどのご助力もあり、メディアの伝送面で、非圧縮の映像伝送をする中にKVMの信号も織り交ぜることで、うまく繋げることができました。
ネットワークが接続されてからは、機器へのアクセスや映像の表示というところまで行けましたので、先ほどお話したような接続の部分だけクリアできれば、特に考慮なくスムーズに繋ぐことができました。また、映像の乱れやノイズの発生、遅延は起きませんでした。
― 今後のATENジャパンでの放送局様向けの展開について聞かせてください。
編集作業をされる方にとっては実機と同じ操作感を求められていると思います。 つまり遅延なく操作できること、編集機から出力されている映像と遜色ない映像の伝送が求められています。そういった利用方法は現状では放送局内のローカル環境で既に実現しています。
次の段階として高速大容量回線などネットワークのインフラが整ってきた際に今回実証したような遠隔地での操作や、将来的にはイベント会場と放送局を繋ぐという使い方も提案していきたいと考えています。
構成図
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